COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、さまざまな原因で慢性的に吸った息を吐きだしにくくなる疾患です。進行すると体重が減少し、呼吸によって二酸化炭素を体外に十分排出できなくなり、最終的には二酸化炭素が貯留する呼吸不全に至ることがあります。では、なぜCOPDの患者は痩せていくのでしょうか?
健康な人が呼吸で消費するカロリーは1日あたり36kcalから76kcal程度です。これは卵1個(80kcal)とほぼ同じです。一方COPDの患者は、呼吸だけで1日あたり430kcal~720kcalものエネルギーを消費するといわれています1)。その結果、筋肉が減少し、成人でありながら小児の筋肉量で呼吸をしなければならない状態になり、疲労が蓄積しやすくなります。こうした悪循環に陥る前に、適切な対策をとることが大切です。
現在のCOPDの治療では、主に気管支を拡げる吸入薬が使われています。しかし、単に吸入薬を使用するだけでは、筋肉量を維持するには十分ではありません。COPDの患者の健康を支えるには、次のような総合的アプローチが必要です。
● 適切な栄養摂取
消化吸収の良い食事を運動前にとり、運動後の適切なタイミングでタンパク質やビタミンを含む栄養を摂取し、筋肉の修復を助ける。
● 適切な運動
呼吸筋や体幹の筋肉を鍛え、体力を維持する。
● 適切な吸入治療
適切な方法で吸入薬を使用する。
こうした包括的なケアを実践するには、正しい知識を学び、日常生活に取り入れることが大切です。そのため、COPDの教育を含めたリハビリ入院の要望が多方面からあったため、医師・看護師・理学療法士・薬剤師・管理栄養士がチームを組み、プログラムを作り上げ、 2025年4月から教育・リハビリ入院を開始する予定です。例えば、COPD罹患後吸入治療をしていたが、体重が減少してきて、ネットの動画などみて自分なりに工夫をして改善を図ったが体重が増えず、どうしたらよいか悩んでいる方などよい適応となります。
検査、指導内容
教育・リハビリ入院では、肺の気腫の状態・筋肉量を測定するためにCT検査、肺活量や1秒率を測るため肺機能検査、全身の筋肉量を測定するInBody検査、骨粗鬆症の有無をしらべるため骨塩定量、心エコー検査、血液検査が行われ、その結果に基づき、リハビリ指導や栄養指導が個別で行われます。
退院後のサポート
退院後も、治療が継続できるようにサポートします。各種検査の結果は紹介元の開業医の先生に送付し、吸入治療や定期的な診察を継続していただきます。当院では、患者の呼吸機能や筋肉量を追跡するため、数カ月ごとの定期受診をお願いする予定です。
かかりつけ医の先生へご相談いただき、かかりつけ医よりお申し込みください。
お申込みいただいてもすべての方が入院になるわけではなく、最終判断は当院呼吸器内科医が判断いたしますので、ご了承の上お申し込みください。
外来にて医師と相談の上、入院日や入院期間を決定します。
COPDと診断された方の中には、「吸入治療を続けているが体重が減ってしまう」「ネットでしらべて工夫しているが、なかなかうまくいかない」といった悩みを抱えている方が多くいるでしょう。教育・リハビリ入院は、そのような方にとって助けになる可能性があります。
ご興味がある方は、かかりつけ医に相談してください。
1)BrownSE, Light RW, et al. : What is now known about protein-energy depletion: When copd patients are malnourished. J Respir dis, 4: 36-50, 1983.
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